ACS712 および ACS713 電流センサー IC に関するよくある質問

基礎絶縁と強化絶縁の定格電圧の違いは何ですか?

Allegro® MicroSystems 電流センサー IC は、IEC 60950 規格に基づいた絶縁試験を受けています。ACS712 および ACS713 デバイスは、強化絶縁の場合は 2100 VRMS定格、基礎絶縁の場合は 1500 VRMS定格です。強化絶縁では、最大 184 Vpeakの動作電圧または DC 電圧が使用可能です。これにより、強化用途向けの 110 VAC メインで使用できます。基礎絶縁では、354 Vpeakの動作電圧または DC 電圧に変換されます。240 VAC 回路での使用に最適です。

基礎絶縁電圧とは、ライン電圧と接地の間に接続されている回路の絶縁定格のことです。強化絶縁電圧とは、ライン電圧と二次的な電気装置の間に接続されている回路の絶縁定格のことです。図 1 ではこれらの仕様を比較しています。

基礎絶縁電圧および強化絶縁電圧


図 1. 基礎絶縁電圧および強化絶縁電圧

ACS712 および ACS713 の場合、実際に主な制限となるのは SOIC8 パッケージ特有の沿面距離と空間距離です。より高い絶縁電圧定格に達するには、沿面距離を増加させるためにデバイスの下にある基板にスリットを追加したり、空間距離を増加させるために絶縁保護コーティングを追加したりするなど、用途自体において措置を講じる必要があります。これらのソリューションは PCB レイアウトや使用されるコーティング材料の機能であるため、安全絶縁規格に適合する必要がある場合は、用途レベルで認定を受ける必要があります。

ACS712 および ACS713 は DC と AC 電流の両方を印加できますか?

ACS712 および ACS713 は、DC および AC コンポーネントをもつ電流に適合したホール効果技術を採用しています。通常、帯域幅は 80 kHz です。

「レシオメトリック」とは何ですか?

ACS712 および ACS713 のレシオメトリック機能とは、デバイスのゲインとオフセットが電源電圧 VCCに比例しているという意味です。この機能は、特に ACS712 および ACS713 をアナログ-デジタル コンバータとともに使用する際に役立ちます。通常、A/D コンバータは基準電圧入力から LSB を駆動します。また、基準電圧が変化すると、それに比例して LSB も変化します。ACS712 と ACS713 の基準電圧と電源電圧は、同じ電源から駆動されます。ACS712 と ACS713 の両出力と A/D コンバータ LSB は、基準電源における変動をすべて追跡します。したがって、基準電圧の変動は、ACS712 および ACS713 出力信号のアナログ-デジタル変換における誤差の原因にはなりません。図 2 は、VCCを変化させた場合の ACS712ELC-20A-T の一次電流 IPと出力電圧 VOUTを比較したプロットです。オフセットと感度レベルは、VCCに比例して変化します。たとえば、VCC= 5.5 V の場合、0 A 出力は 5.5 / 2 = 2.75 V (公称)、感度は 110 mV/A (公称) になります。

特徴的な性能


図 2. ACS712ELC-20A-T の特徴的な性能:多様な VCCレベルでの VOUTと IPの比較

どのような外部コンポーネントが必要ですか?

Allegro では、VCC ピンと GND ピンの間で 0.1µF バイパス コンデンサを使用することをお勧めします。コンデンサは、できる限り ACS712 および ACS713 パッケージ本体の近くに配置してください。

ACS712 と ACS713 のゲインを調整する方法はありますか?

いいえ。ACS712 および ACS713 の mV/A 感度および 0 アンペア静止時電圧レベルは工場でプログラムされています。

どのくらい電流が小さければ、ACS712 で分解できますか?

ACS712 の分解能は、そのノイズ レベルによって制限されています。フィルタリング特性を表 1 に示します。

表 1. ACS712ELC-05B のノイズ レベルおよび分解能と
フィルタリング キャパシタンスおよび得られる帯域幅の比較

感度 = 185 (mV/A)

Pk-Pk ノイズ
(mV)

電流分解能
(mA)

Cf
(nF)

BW
(kHz)

92

497

0

80

46

249

4.7

19.9

26

141

22

4.3

20

108

47

2.0

高分解能が必要な場合は、Allegro の工場までお問い合わせください。Allegro では、業界最高レベルの電流センサー IC のノイズ特性の導入および向上を継続しています。当社では、用途のニーズを満たすポートフォリオにおいて、より高い分解能をもつ製品をご用意しています。

ACS712 の ESD 耐性はどうなっていますか?

ESD 耐性の標準値は 6 kV (人体モデル)、600 V (マシン モデル) です。

評価ボードのガーバー ファイルを入手できますか?

こちらのガーバー ファイル(ZIP) をダウンロードしてください。

ガーバー ファイルを使用できないのですが、他に使用できるレイアウト データはありますか?

配置図の PDF ファイルは、こちらのACS712 Layer Prints(PDF) からダウンロードできます。
部品表は、こちらのACS712 部品表(PDF) からダウンロードできます。

電流経路と信号回路との間の沿面距離および空間距離はどうなっていますか?

ACS712 では、一次リードと二次リード間の空間の距離である空間距離は、通常 2 mm です。これは、二次リードに接続されている、一次リードからパッケージの横側にあるタイ バーまでの最短距離です (図 3 を参照)。空間距離は、絶縁保護コーティングを追加することによって増加します。

図 3


図 3. ACS712 のリードフレーム。空間距離が約 2 mm であることを示しています。

デバイスのパッケージ面の沿面距離も約 2 mm です。一次リードから二次リードまでの最短距離は、パッケージの端からパッケージの横側のタイ バーに沿った距離になります。

パッケージが実装されているプリント基板面の沿面距離は約 3.9 mm です。ただし、必要に応じて、パッケージと反対側のはんだパッド間の基板のスリットをカットすることによって、この距離を延長できます (図 4 を参照)。

図 4

図 4. 沿面をさらに制御するための、ピンの 2 つのバンクを隔てるパッケージの
下にある PCB での典型的なスリットのカット

ACS712 の通電導体のインダクタンスはどうなっていますか?

代表的な測定インダクタンスとテスト信号周波数の比較は、次のとおりです。

  • 2.5 nH (10 kHz)
  • 2.4 nH (50 kHz)
  • 2.2 nH (100 kHz)
  • 2.15 nH (200 kHz)

ACS712 の通電導体とデバイスの接地の間のキャパシタンスはどうなっていますか?

値は非常に小さく、1 pF (標準値) 未満と測定されました。

評価ボードの銅配線の厚みはどのくらいですか?

評価ボードには、2 オンスの銅が使用されています。

ACS712 と ACS713 を適用する設計ガイドラインは他にありますか?

計測する電流経路のインダクタンスを最低限に抑えるには、注意が必要です。また、その経路のすべての接続の接点/接続抵抗を最小に抑えることにも注意を払う必要があります。

ACS712 および ACS713 に鉛は含まれていますか?

ACS712 および ACS713 のリードフレームは、鉛フリーの 100% 曇り錫でめっき加工されるため、それに応じた処理およびはんだ付けを行う必要があります。ただし、ACS712 および ACS713 はフリップチップ デバイスであり、ダイとリード フレームをつなげるパッケージ内部のはんだボールの成分比は鉛 95%、錫 5% です。高温フリップチップはんだボールに代わる鉛フリーの製品は、まだ市販されていません。したがって、この成分のはんだボールは、RoHS の鉛フリー要件 (電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関する 2003 年 1 月 27 日付欧州議会・理事会指令 2002/95/EC) を免除されています。

リードフレームの構成はどうなっていますか?

リードフレームは無酸素銅で作られています。

ACS712 および ACS713 は漂遊磁界の影響をどのくらい受けやすいですか?

後続の解析のための前提:
A. 漂遊磁界はプリント基板 (PCB) のトレースまたは Allegro デバイスに近接した外部の通電導体を流れる電流から生じる。
B. 外部通電導体は、ホール エレメントと同じプレーンにある。
C. 導体の長さは無限である。

上記の前提では、ホール エレメントの保護がないため、通電導体によって生じる漂遊磁界について最悪のケースの解析となります。また、ホール エレメントは外乱に対して最適なプレーンにあります。

導体までの距離 λ で、導体とホール エレメントがあるプレーンに対して垂直の方向に生じる磁界 B は、次のようになります。

BEXT= μ0× I / ( 2 π × λ ) (テスラ)

ここで、

μ0= 4 π×10E-7 (H/m)、
= 400 π (nH/m)、
そばに心材がない、
I は導体を流れる電流の大きさ (アンペア)、
λ は注目点と導体との距離 (メートル) と仮定します。

解析は、ACS712 シリーズの磁気結合係数が標準でアンペアあたり 12 ガウス/A という事実に基づいています。

単に外部の磁気擾乱の結果である ACS712 出力信号のパーセント誤差 (デバイスのフル スケールの電流範囲に対する割合) は、以下のように計算されます。

外場の誤差 = ( BEXT/ [12 G / A × IP] ) × 100 (%)

図 5 は、さまざまな一次電流値 (A) に対する電流の絶対誤差 (A) と一次導体からのホール エレメントの距離 (mm) の比較を示しています。

特徴的な性能

図 5. さまざまな電流レベルでの絶対出力信号誤差とホール エレメントおよび
外部 PCB 導体間の距離の比較

このトピックの詳細については、アプリケーション ノート AN26030を参照してください。

ACS712 および ACS713 にはどのような安全性認定がありますか?

ACS712 および ACS713 は、TÜV America により次の規格で認証を受けています。

  • UL 60950-1:2003
  • EN 60950-1:2001
  • CAN/CSA C22.2 No. 60950-1:2003

成形材料は、UL94V-0 で UL 認証を受けています。

デバイスの出力を指定最大キャパシタンスの 10 nF を超える値で駆動させたらどうなりますか?

出力が不安定になったり変動したりする可能性があります。

デバイスの出力を指定最小抵抗の 4.7 kΩ 未満の値で駆動させたらどうなりますか?

出力で、負荷を完全に駆動できない可能性があるため、データシートの仕様のように正確ではなくなる場合があります。出力抵抗が非常に低くなるか、または VCCに短絡した場合、過負荷電流が一定期間継続すると出力に回復不能な損傷を与える可能性があります。

ACS712 の過電流耐性はどうなっていますか?

Allegros ASEK712 デモ ボードに基づいた連続 DC (または AC RMS) 電流を使用した安定状態の温度試験では、周辺温度が 85°C のとき、ACS712 は、最高熱接合部温度である 165°C に達しないうちは最大 40 A に耐えることができます。周辺温度が 150°C と高い場合、ACS712 は、熱接合部温度の 165°C に達しないうちは最大 20 A に耐えることができます。図 6 を参照してください。

特徴的な性能

図 6. 標準的なACS712 のダイの温度と連続 DC IP電流の比較

電流パルス値が高くデューティ サイクルが小さい場合は、表 2 を参照してください。

表 2. ACS712 持続パルスの一次 DC 電流レート*

電流増幅
(A)

パルス持続時間
(m 秒)

デューティ サイクル
(%)

最大許容
パルス数

60

1000

10

制限なし

120

20

10

制限なし

200

10

10

10

200

10

1

制限なし

100

10

10

制限なし

*この表のデータは、TA= 25°C の場合にのみ有効で、Allegro ASEK712 デモ ボードを使用して取得されました。

ACS712 のリードフレーム耐性における変動はどうなっていますか?

限られたサンプルに基づいて、テスト結果を表 3 に示します。

表 3. さまざまな周辺温度での標準のリードフレーム抵抗

TA
(°C)

リードフレーム抵抗
(mΩ)

サンプル
の数

最大値

平均値

最小値

-40

1.25

0.8

0.46

82

25

1.39

1.03

0.47

85

85

1.46

1.09

0.53

79

150

1.61

1.28

0.91

87

データシートの定格絶縁電圧を超える電圧でデバイスを使用できますか?

大抵、デバイスの ACS712 シリーズは、データシートの定格動作電圧以上の電圧でうまく動作します。ただし、安全認証準拠の要件のため、デバイスのデータシートで指定されている値を超える定格電圧でデバイスを使用することは推奨しておらず、また、認めていません。より高い電圧を絶縁できるデバイスを必要としている場合は、Allegro の工場までお問い合わせください。